第11章 鋼のこころ
地面に寝転がる兄弟は、幼少期の思い出を語る。
小さい頃からたくさん喧嘩をしたよなと切り出すエドワードくんにアルフォンスくんは小さく頷いた。
「今思えばくっだらねぇ事でケンカしたよな」
「二段ベッドの上か下か……とかね」
「あの時、オレ負けたな」
「おやつの事でいつもケンカしてたっけ」
「あ~~~、勝った覚えが無ぇや。おもちゃの取り合いもしたな」
「ボクが勝った。レイン川で遊んでた時も」
「オレ、川に突き落とされたっけな」
「師匠の所で修行中もケンカしたよね」
「"やかましい"って師匠に半殺しにされたからドローだろ、あれは。オレがアルの本に落書きした時もな」
「ボクの圧勝だったね。"ウィンリィをお嫁さんにするのはどっちだ"ってケンカもした」
「え⁉そんなの覚えてねーぞ!!」
「やっぱりボクが勝った。でも二人ともふられた」
「あっそう……」
少しの沈黙の後、アルフォンスくんに「全部うその記憶だと言うのか」と問いかけるエドワードくん。
嘘だなんて言えるわけがない。
もし言えたとしても、それこそが嘘だ。