第11章 鋼のこころ
そう思った時だった。
「バカーーーーーーーーーっっ!!」
鋭い金属音と共にウィンリィさんの怒号が響き渡った。
荒い息を何度か繰り返した彼女の瞳からは、大粒の涙がいくつも零れ落ちたが、彼女は気にも留めずにもう一度アルフォンスくんの頭をスパナで殴った。
「アルのバカちん!!エドの気持ちも知らないで!!エドが怖くて言えなかった事ってのはね……」
それはウィンリィさんだけが知っているエドワードくんの弱音。
「アルがエドを恨んでるんじゃないかって事よ!!」
アルフォンスくんの身体を鎧の姿にしてしまったのは自分のせいだとずっと責めてきたのだろう。
だから、さっき彼は安堵のような笑みを浮かべたのか。
そして同時に、安堵してしまった自分自身に反吐がでて嫌気が差したのではないだろうか。
私の憶測でしかないから、はっきりとはわからないけど。
「機械鎧手術の痛みと熱にうなされながらあいつ、毎晩泣いてたんだよ。それを……、それなのにあんたはっ……」
エドワードくんの痛みと苦しみを知っているから、心の内を知っているからこそ、ウィンリィさんは涙を流す。
「自分の命を捨てる覚悟で偽物の弟を作るバカがどこの世界にいるってのよ!!あんた達、たった二人の兄弟じゃないの」
嗚咽交じりの彼女の言葉はどこまでもまっすぐだった。