第11章 鋼のこころ
暫くしてお誕生日会もお開きになり、私とウィンリィさんは後片付けをしヒューズさんはエリシアちゃんをお風呂へと連れて行った。
あんなに騒がしくて楽しかった空間は今はとても静かでゆっくりとした時間が流れている。
少しだけ寂しさを残した雰囲気は、案外嫌いじゃなかったりする。
「あっ」
その時、グレイシアさんが手に口を当て困惑した表情を浮かべていた。
どうしたのだろうと思っていると「ウィンリィちゃんのお部屋の準備をしていない」と言った。
急な訪問だったため、空いている部屋の換気や布団の準備をしていない。
「急にお邪魔したのは私の方なので、気にしないでください」
「そういうわけには……」
「でしたら私の部屋を使ってください」
あまり使っていないけど、ここ最近は寝泊まりで帰っているから少しは綺麗なはず。
今から掃除するよりはよほどいいだろう。
「そしたらさんが……」
「私でしたら大丈夫です」
軍の硬いソファで寝る事なんてザラだし、何より私はあまり眠らない。
ソファで1時間横になるだけで充分。
それを伝えるときっと心配するだろうから言わないけど。
遠慮がちのウィンリィさんを説得することに成功し、彼女を私の部屋へと案内した。
ベッドと机とクローゼットしかない殺風景な部屋。
こうしてみると生活感がない。
「何もないんですけど、ゆっくり休んでください」
「ほんとうにいいんですか?」
「はい。些細なお礼です」
口角をあげて小さく笑うと、ウィンリィさん「ありがとうございます」と頭を下げた。
静かに扉を閉めて、私はリビングのソファへと腰かける。
一気に疲れが身体に押し寄せ、深いため息を吐いた。