第11章 鋼のこころ
エリシアちゃんからおもちゃを受けとった彼女は、慣れた手つきで部品を外し、動かない原因をすぐに見つけるとあっという間に直してしまった。
機械鎧整備師だから当たり前なのかもしれないが、その腕前に私も周りも感心し見惚れるしかなかった。
「おもちゃのお医者さんだ!」
「おはは。ちがうけど、似たようなものね」
目をキラキラと輝かせるエリシアちゃん。
よかった、悲しい思い出にならないで。
「ありがとうございます」
「大したことしてないですよ!」
「いいえ。大したことですよ」
子供たちが、エリシアちゃんが、笑っているのだから。
あなたのその手は、周りを喜ばせる力があるのだから。
「誇りに思ってください」
ウィンリィさんは、恥ずかしそうにはにかんで笑った。
エリシアちゃんはネズミの一件があったからかウィンリィさんに随分と懐いたみたいで、今も彼女の膝の上に乗っておもちゃで遊んでいる。
「あいつの整備師やってるって?」
今は、私とウィンリィさんとヒューズさんの3人でエルリック兄弟の話をしている。
エルリック兄弟とは幼馴染であること、家族みたいな存在だと話す彼女にヒューズさんは「手間がかかるだろ」と笑った。
「手間がかかるって言うか心配ばっかり。たまに帰って来たと思ったらおもいっきり腕壊してるし」
はじめこそ笑って話していたウィンリィさんだったが、やはり今回の入院で思うところがあるのだろう。
笑みは少しずつ消え明るかった声色も沈んでいった。