第11章 鋼のこころ
エリシアちゃんの小さな手にはネズミのブリキのおもちゃが握られていた。
ゼンマイを巻けばカタカタと音を鳴らして動くおもちゃはヒューズさんからのプレゼント。
「これね、こうするとね、動くんだよ!!」
一生懸命にゼンマイを巻くエリシアちゃん。
小さい子の笑顔ってなんでこんなに幸せな気持ちになるんだろう。
エリシアちゃんを床に下ろし、ネズミが動くところを一緒に見届ける。
しかし、ゼンマイを回したはずのそれはピクリとも動かなかった。
首をかしげるエリシアちゃん。
もう一度巻くがやはり動かない。
故障したのかもしくは不良品だったのか。
どちらにせよ、動かないことに変わりない。
せっかくの誕生日なのに、おもちゃが壊れたとなれば悲しくて辛いだろう。
案の定、エリシアちゃんは眉を寄せて今にも泣きそうだ。
「エリシアちゃん、少しだけ待っていてもらえますか?」
ネズミを大事そうに抱えるエリシアちゃんにそう言うと、一回だけ首を縦に振った。
いい子だね、と頭を撫で私はとある人物の元へと足を運んだ。
「ウィンリィさん」
「あ、さん!!」
お皿いっぱいに料理を乗せているウィンリィさんに声を掛け、壊れたおもちゃを直せるか聞いてみると「ブリキのおもちゃですよね。直せますよ」と二つ返事で了承してくれた。
なんて頼もしいんだろう。
ここにウィンリィさんが居てくれてよかった。