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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第11章 鋼のこころ






その様子を微笑ましく見ていると、アルフォンスくんが静かに病室を出て行くのに気が付いた。
いつもなら彼らの言い合いを見て「まったくもう」とか「牛乳くらい飲みなよ、兄さん」などと言って宥めるか煽るかのどちらかなのに。
そのどちらもなく、静かに病室を抜けるなんて。
エドワードくんも彼の様子がおかしいことに気づいたようで、彼が出て行った扉をじっと見つめ、小さい声でアルフォンスくんの名を呼んだ。

「……じゃあ整備するからベッドに仰向けになって」
「おぉ」

ウィンリィさんの指示に従い、エドワードくんはベッドに仰向けになる。
何処が故障しているのか、どんなふうに故障しているのか、一つ一つ丁寧に確認し作業に取り掛かるウィンリィさん。
私とブロッシュ軍曹はそれを黙って見ていた。

「そういえば、"賢者の石が手に入ればばっちゃんもあたしも用無しだ!"なーんて言ってくれたわよね。そのくせまだ機械鎧のままだし!」

事情を知らないとはいえ、今の私たちには刺さるものがある。
賢者の石の材料が生きた人間であるうえ軍が絡んでいるとなるとそう簡単に賢者の石を手に入れることはできないし、手に入れたとしても彼らはそれを使って元の身体を取りもどしたりはしない。
それに、元の身体に戻る手がかりを探すため閉鎖されている建物に無断に侵入したら守護者に見つかって戦った結果がこのケガです、なんて言えるはずもない。
民間人であるウィンリィさんを巻き込んで危険な目に遭わせてしまうことになる。
彼らなりに彼女の事を気遣い護っているんだ。



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