第11章 鋼のこころ
「じゃあさ、好きな人は?」
色ボケ軍曹の質問は止まることはなく今もなお続いている。
懲りないなこの人も。
どうせ「いらん!」って言われるのがオチで、恋の話で盛り上がることはないのに。
なんて思いとは裏腹に、彼からの解答がない事に違和感を持ちふと彼の方を向いた。
一点を見つめているのに気が付き、私もそちらへ視線を向けた。
そこにはソファベンチに座って項垂れているアルフォンスくんがいた。
「アル!」
「兄……さん」
「そんな所にいないで部屋に行かないか?」
エドワードくんの言葉にアルフォンスくんは何も言わなかった。
一瞬の間を置いて「なんでもない、今行く」と言うも、その場から動く気配はない。
「?先に行ってるぞ」
誰がどう見てもアルフォンスくんの様子はおかしかった。
だけど、何がどうおかしいかなんて案外わからないもので、どう声を掛けていいのかもわからない。
だからただ待つことしかできない。
彼が吐露してくるその日まで。