第11章 鋼のこころ
病室に戻る途中、エドワードくんの姿を見つけた。
どうやらウィンリィさんに電話をしているようだ。
きっと機械鎧の整備依頼だろう。
「ああ、じゃあ詳しい事はまた電話する。うん。うん、悪ィな」
深く大きい安堵の息を吐くエドワードくん。
受話器を静かに置くと、いつの間にか近くにいたブロッシュ軍曹が彼に声を掛けた。
「彼女に電話?」
「誰が彼女かーーーッ!!」
エドワードくんは顔を真っ赤にさせて叫んだ。
瞬間、まだ塞がりきっていない傷口から血が噴き出し、私と軍曹は慌てて看護師さんを呼ぶと言うちょっとした騒動が起きた。
「ただの機械鎧整備師だよ!」
傷口を刺激しないために、しばらくは車いすでを使用することになり、今は軍曹に車いすを押されながら病室に戻るところだった。
「なんだつまらないな」
「つまらなくて結構!」
「彼女いないの?」
「いらん!」
人様の色恋にニヤニヤと緩んだ笑みを隠さないブロッシュ軍曹に、口を一文字に結んでいるエドワードくん。
その顔は若干まだ赤く照れていることは明白だった。