第11章 鋼のこころ
屋上へ行くと、アルフォンスくんはまだそこにいた。
フェンスにぼんやりとした様子に、もしかしてブロッシュ軍曹に怒られたことに落ち込んでいるのではないかと思ったが、年齢に比べ精神面が成熟している彼に限って反省はすれど落ち込むことはないだろう。
だとしたらなにか気になることがあるのかもしれない。
「アルフォンスくん」
「さん……。えっと、怪我は大丈夫なんですか」
「はい。ご心配おかけしました」
表情のない鎧の姿でも、今彼がどんな顔をしているのかわかるのは、彼らのことを少しずつ理解しているからだろう。
横目で彼を見つめる。
まるで空っぽのような、心がここにないような、遠くを見つめるアルフォンスくんに私はそっと声を掛けた。
「なにか、お困りですか?」
「え?」
「悩んでいるように見えたので」
「いえ、そんな……悩みなんて……」
ごにょごにょと歯切れの悪い物言いに、彼が何か思いつめていることが明白になった。
でもそれを無理矢理聞き出したりはしない。
もしかしたら彼自身、頭の中を整理整頓している最中かもしれないから。
「言いたくなったらこっそり言ってください。ご相談はいつでも受付中です」
小さく笑みを零すとアルフォンスくんも静かに笑ったように見えた。
そして小さな、本当に小さなため息を吐くと「あの、」と声を漏らした。