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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第11章 鋼のこころ






「以上!下官にあるまじき暴力と暴言、お許しください!!」

溢れ出しそうになる涙を必死に堪えていたら、彼らは青い顔をして冷汗を流していた。
お咎めを覚悟していたようだけど、私も彼もそんなものを与える気はさらさらなかった。
彼女たちの言葉は正論であったし命令を無視した私達を叱咤するのは当然だから。
私はともかくエドワードくんにまで気を遣うのは、国家錬金術師である彼が少佐相当官の地位を持っているから。
一般軍人ではないが、地位だけ見れば私よりも上なんだ彼は。
けど、彼は地位が欲しくて国家錬金術師になったわけではないから、気にする必要もないのだけど。

「ブロッシュ軍曹、アルフォンスくんを見ませんでしたか?」

この場にいないアルフォンスくんが気になり、聞いてみると「さっきオレが説教した時は病院の屋上にいましたよ」と答えてくれた。
アルフォンスくんにも鉄槌を食らわせたのだろう、軍曹の手の甲が赤くなっていることに気が付き、私は小さく笑った。

「では、私は少しばかりアルフォンスくんのところへ行ってきます」
「歩いて大丈夫なのかよ」
「はい、私は軽傷なので」
「……嫌味か?」
「まさか」

そう言って、私は病室を後にした。
軽傷、とは言ったものの血を流したことに変わりない。
人より体温が低い私は少しの出血でも、死んでしまう可能性がある。
怪我だけは気を付けなければいけないが、こればっかりは難しい場合もある。
ああ、大佐に報告しなければいけないと思うと憂鬱だ。
きっとたくさん叱られるんだ。
リザさんには呆れられるかも。
キリキリと胃が痛んだ。
よし、とりあえず報告は後回しにしよう。
今はアルフォンスくんの元へと行かなければ。



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