第1章 三人の錬金術師
作戦のためにボクとロゼは、兄さんとさんと別れ準備に取り掛かることにした。
部屋を出る時、「おまえさ……」と兄さんの声が聞こえたけど、ボクは何も聴こえなかったふりをしてその場を後にした。
ロゼに教会の鐘のある場所を教えてもらい、それを誰にもバレないようにそっと取り外す。
「さっきの話だけど、まだ信じられない。そうまでしないと錬成できないなんて……」
「言ったろ。錬金術の基本は"等価交換"って」
何かを得ようとするならそれなりの代価を払わなければいけない。
「兄さんも"天才"だなんて言われているけど、"努力"という代価を払ったからこそ今の兄さんがあるんだ」
「でもそこまでの犠牲を払ったからにはお母さんはちゃんと……」
ちゃんと生き返ったのか。
そう言いかけてロゼは口を閉ざす。
生き返ったなら、どれだけよかっただろう。
夢みたいな現実が今でも脳裏に焼き付いて離れない。
あの日、錬成した母さんは……、
「人の形をしていなかった」
左足と身体を全て持って行かれて、これだけの代価を支払っても、人は、母さんは生き返らず、人体錬成を失敗した代償だけがボクたちの身体に刻まれた。
「人体錬成をあきらめたけど、それでも兄さんはボクの身体だけでも元に戻そうとしてくれてる。ボクだって兄さんを元に戻してやりたい。でもそのリスクが大きいのはさっき話した通り……。ボクたちが選んだのはそういう茨の道だ」
そしてさんも……。
「だからロゼ。君はこっちに来ちゃいけない」
こちら側に堕ちるのはボク達だけでいい。