第10章 【外伝】軍部祭り
「どうなんだ実際」
「鋼のはあちこちで派手にやってるそうだぞ」
「おいおい。お前ら、東部内乱の時の大佐を知らんのか?」「誰か対戦カード組めよ」
そこかしこでそんな会話が毎日聞こえてくる。
自分ごとではないからこそ楽しそうな声に私は溜息しか出てこない。
でも、そんな会話で盛り上がれるってことは平和な証拠でもある。
今日も何事もない日になるんだろうな。
そう思った矢先だった。
「マスタング大佐とアールシャナ中尉だったら?」
「鋼のと中尉なら?」
「"雪女"って異名でイシュヴァールの内乱を生き抜いた人だぞ」
「大佐や鋼のより強かったらどうするよ」
「どうもこうもしねえだろ。……ただ、ショックではあるよな」
まさか私にまで火種が飛んでくるとは思わなかった。
気づいたら、エドワードくんと大佐だけでなく私も噂の渦中の中に巻き込まれ、話はどんどん盛り上がって収拾のつかない事態となってしまった。
「……近頃、東方司令部内で私と鋼の、そして、どちらが強いかという話で盛り上がっているようだが」
「私は無関係です。巻き込まれただけです。私より大佐が強いに決まってます。それ以上も以下もありません」
書類整理をしながらきっぱりと物申す私に大佐は困ったように笑ってみせた。