第9章 第五研究所
破壊された鎧をみて、脳裏にスカーの姿が浮かんだ。
理解、分解、再構築という錬金術の三段階の工程。
その二番目である分解で錬成を止めたのか。
瞬時にその判断ができるとは。
私は彼のことを甘く見ていたのかもしれない。
「いっ……てぇ……」
「エドワードくん!!」
壁に寄りかかってずるずると崩れ落ちる彼に駆け寄り、出血量を確かめる。
今すぐ死ぬような量ではないが、早く病院に連れていかないと。
「ちくしょう!やりやがったなこのガキども!!」
血印を壊していないため、弟の方はじたばたを手を動かして暴れる。
その姿はまるで虫が地面ではいずり回っているよう。
しかし、これ以上は何もできないと悟った彼らは観念したようで、つい先ほどまでの殺気は感じられない。
「今度こそ知っている事を教えていただけませんか?」
「それは言えん。さあ、さっさと我々を破壊してここを出て行け」
頑なに口を割ろうとしない彼ら。
ここまで頑固というより信念に近い何かがあるのかもしれない。
"破壊しろ"と言った彼らの言葉に、エドワードくんは瞳を閉じて息をゆっくりと吐いた。