第9章 第五研究所
「―――たとえおまえたちの仲間が私の連れを倒しここに向かっていたとしても、この建物は複雑な造りになっている。ここまでたどり着くのにかなりの時間を費やすだろうよ」
たしかに。
私たちもここに着くまでに時間がかかった。
アルフォンスくんが既に敵を倒していたとしも、必ずしもここにこれるという確証はない。
つまり現状は何一つ変わらない。
せめてエドワードくんだけでも逃がしてあげたいところだけど、彼が素直に逃げるとも思えない。
「ならば時間を稼ぐだけですね」
「そんなことはさせんよ」
アリフォンスくんがここに来ると言う確実性はない。
が、来る"かも"しれないという疑念があるだけで大分やりづらくなるはずだ。
「その怪我で私を倒せると?」
「倒せますよ。舐めないでください」
これでもイシュヴァールを生き残っている身だ。
私はサーベルをスライサーの足元へと思い切り投げた。
軽い身のこなしでそれを避けるスライサーの動きは想定内、ただ一瞬でもそちらへ気を反らせればよかった。
一気に間合いを詰め、スライサーの持っている刀を私は蹴り上げた。
高く宙に舞った刀は金属音を立て地面に落ちる。
「……見事だ」
「お褒めの言葉、どうも」
丸腰になったスライサーの頭部と胴体を切り離し、私もエドワードくんも大きく息を吐いた。
血印は頭部にあった。
それさえ離してしまえば胴体は動くことはない。
「サンキューな、」
「いえ。私も助けられましたので、お互い様です」
「怪我、平気か?」
「これくらいは大丈夫です」
「そか」
「エドワードくんは?肩を斬られていたでしょう」
「かすり傷だ」
「そうですか」
「何を呑気に話をしているんだ?まだ私の血印は壊されていないぞ。さっさと破壊し……あ」
エドワードくんは地面に転がる頭部を拾い上げる。
破壊する前に聞きたいことを聞き出さなければいけない。
そのためにここに来た。