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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第9章 第五研究所






「……っ!!」

間一髪で避けたエドワード君だったが、左肩を斬られたのか地面に赤い液体が零れ落ちた。

「エドワードくん!!」
「殺人鬼の言葉を信じないことだ」
「くそっ……」

なんで私を狙うと信じた。
平気で嘘をつくに決まっているのに。
舌打ちをして、エドワードくんのところへ駆けつけようとしたが、ずきりと足に激痛が走った。
地面に広がる真っ赤な水たまり。
それは私の左の脹脛から流れ出ている。
まさか、さっきエドワードくんとの間合いを詰めた時に私の足を斬りつけたのか。
気付かなかった、見えなかった。
それほどまでのスピード。

視線の先では男の攻撃を避けるので精一杯のエドワードくんが見える。
早く加勢をしなければ。

「……まるでサルだな」
「んだとコラ!!」

足の痛みなど気にしている場合じゃない。
私はゆっくりと立ち上がる。
左に体重をかけるたび、激痛が全身に広がった。

「その傷と疲労では勝負は見えている。表にいるおまえたちの仲間は今ごろ私の連れが始末しているはずだ。助けにくる事はできんだろう」

ああ、くそっ……。
アルフォンスくんは大丈夫だろうか。
怪我をしていないだろうか。
心配ごとばかりが頭に浮かんでしまう。

「………よう。その連れって強いのか?」

荒い呼吸を繰り返しているエドワードくんが静かにスライサーに尋ねた。
スライサーは言った。
「強いぞ。私よりは弱いがな」と。
その言葉を聞いてエドワードくんはどこか楽しそうに嬉しそうに喜んだように声をあげて笑った。

「だったら心配いらねーや。オレ、昔っからあいつとケンカして勝った事無いんだ」

勝ち誇ったような笑みを見せるエドワードくんに、私も少しだけ笑った。
彼がそう言うのであれば心配する必要はない。
アルフォンスくんは大丈夫。
そう信じて、目の前の敵だけを見据え私はサーベルを構えた。



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