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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第9章 第五研究所






スライサーは兜の面頬の部分を開け頭部を見せる。
そこには赤黒い印が刻まれていた。

「弱点を教えてくれるなんて親切なおっさんだ」
「ふはは。私は戦いに緊張感を求めるタイプなのでな」
「親切ついでにオレたちをこのまま見逃してくれたりしないかな~……なんつってみたり」
「ここで逃がしてくれるような人が殺人鬼になるとは到底思えませんね」
「ふはは。お嬢ちゃんの言う通りだ。ここで取り逃がしたら殺人鬼の名が穢れる」
「変なところにこだわりをもっているんですね」

一時休戦となっていた戦いは今を持って再開される。
戦いが長引けば長引く程不利になるのはこちら側だ。
弱点は分かっているが、あっちは無限の体力なうえにリーチの差がありすぎる。
距離を見誤ればすぐに切り刻まれて死に至る。
やりづらい相手……だけど負ける気がしない。

エドワードくんを守りつつ私自身も攻撃を受けないように立ち回る。
エドワードくんもまた隙を見て攻撃を仕掛けるが、このスライサーという男、多人数との手合いをやり慣れているのか立ち回りが上手い。
というより、視野が広く駆け引きが上手い。
2人相手でも苦ではないようで、あしらわれてしまう。

「………先に、お嬢ちゃんから殺した方がよさそうだ」
「そう簡単に殺される私ではありませんよ」

どうやら、スライサーは私に的を絞ったようで先ほどまでの雰囲気が変わった。
エドワードくんが何か言おうとしたが、それを静かに制した。
血印を壊せなくても頭と胴体を切り離すことができればいい。
勝利条件はそれだけでいい。
私は小さく息を吐いた。
瞬間だった。
私を先に殺すものだと思っていたのに、男は私の後ろにいるエドワードくんに刀を向け、地面を蹴った。
油断をしていたわけではない、私も彼も。
だけど、反応できなかった。


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