第9章 第五研究所
「ひょっとしてあんた、その中空っぽなんじゃねーの?」
「―――おどろいたな。よく気がついた」
「あんたみたいなのとしょっちゅう手合わせしてるんでね」
「ほう。表の世界にも私と同じのがいるのか」
「嫌になるね。オレ以外に魂を鎧に定着させるなんて事を考える馬鹿がいるなんてよ」
エドワードくんは眉間に皺を寄せて皮肉交じりに笑った。
これではっきりしたことがある。
魂を鎧や他のモノに定着させるためには、真理の扉にある魂を呼び戻す必要がある。
そして等価交換で代償を支払わなといけない。
そんなことに手を貸す協力者がいるのか、それともその協力者さえも駒なのか。
どちらにせよ、真理の扉から魂を引っ張り出せる技量を持った錬金術師がいるということは確かだ。
エドワードくんの言う通り、嫌になる。
目の前の鎧男が急激に得体の知れない者に見えてくる。
だけど、そんなことを思ってしまったらアルフォンスくんのこともそう思ってしまうことになる。
嫌だ、本当に、嫌になることばかりだ。
男は言った。
どこか楽しそうな口調で自身の名前を名乗った。
まだ肉体があった頃は「スライサー」と呼ばれていた殺人鬼だった、と。
表向きには2年前に死刑になった事にされていると言う。
スライサーはその腕を買われ実験材料となり、今は番犬としてここに居ると言った。
「……て事は魂と鎧を仲立ちしている印がどこかにあるんだな?」
「ふむ……。全てを説明する必要も無しか」