第1章 三人の錬金術師
――アルフォンス・エルリックside――
―――母さんの笑顔が見たかった。
ただそれだけのことだった。
生命を創りだすことになんの疑いもなかった。
優しい人だった、本当に。
また母さんに会えるなら、錬金術の禁忌にふれてもいいと思った。
ボクたちはそれだけのために錬金術を鍛えていたから。
―――錬成は、失敗だった。
錬金術の禁忌に触れた咎人は、報いを受けなければいけない。
罪と罰。
ボクたちが犯した過ち。
兄さんは錬成の過程で左足を。
ボクは身体を全部"持って行かれた"。
ボクの意識は一旦そこで途切れ、次に目を開けた時に見たものは、この鎧の身体と血の海の中の―――。
「兄さんは左足を失ったままの重傷で……今度はボクの魂おwその右腕と引き換えに錬成してこの鎧に定着させたんだ」
「へっ……。2人がかりで1人の人間を蘇らせようとしてこのザマだ……」
兄さんは自嘲するかのように言った。
「ロゼさん、人を蘇らせるとはそう言う事です。その覚悟がありますか、あなたに」
さんは強い口調でロゼに訊いた。
鋭い眼光はまっすぐに彼女を捉えている。
その様子に、先ほどから感じる彼女に対して一つの違和感を抱く。
錬成陣のない錬成に今の発言。
疑惑が確信へと変わっていく。
さんも、人体錬成を……?
でも、どこかを持って行かれたような雰囲気はない。
彼女は一体なにを代償にしたのだろう。