第9章 第五研究所
裏口もがっちりと木の板で塞がれ閉鎖されている。
どうやって中へ入ろうかと考えていると、エドワードくんがじっと上を見ていることに気が付いた。
これは排気ダクト……?
彼はアルフォンスくんの肩を借りて、蓋を取り外すと「奥まで続いてそう」と言った。
「アル、ここで待ってろ」
「ええ?兄さん一人で大丈夫?」
「大丈夫もなにもおまえのでかい図体じゃここ通れないだろ。んじゃちょっくら行ってくる」
「好きででかくなったんじゃないやい」
あれよあれよという間にエドワードくんは建物の中に入ってしまった。
まさか二手に分かれるとは思っていなかった。
二人を護らなきゃいけないのに……。
明らかに危険なのはエドワードくんのほうだが、まだ14歳のアルフォンスくんを一人でここに残すのも気が引ける。
どうしようと悩んでいる私にアルフォンスくんは不思議そうに首を傾げた。
「さんは行かないんですか?」
「え……?」
「確かめたいことがあるって言ってたじゃないですか」
「そう、なんですが……」
煮え切らない私の態度に何かを察したアルフォンスくんは「ボクのことなら大丈夫です」と優しい声で私を諭した。
護るべき対象にそんなことを言わせてしまうなんて護衛失格だ。
でも、私は彼の言葉に甘えることにした。
「なにかあったら、すぐに逃げて……いえ、死なない程度に応戦してください」
「ははは、わかりました」
本当は逃げてほしいけど、アルフォンスくんのことだ。
目の前のことから逃げたりしない、エドワードくんを置いてなどいかない。
だから、死なないようにとそう伝える事しかできなかった。