第9章 第五研究所
「さんも」
「え?」
「大丈夫、上には兄さんもいるし」
つまり私も彼と同じように飛べということか。
やったことのない経験に上手くいくのかとか、失敗したら外壁の向こう側まで飛んで落下するのではないかとか、そんな考えが過ったけど、今はそんなことを考えてる暇はない。
私は意を決してアルフォンスくんの組んだ手に足を乗せた。
瞬間、身体が勢いよく宙に浮きわけもわからないまま、私の身体はエドワードくんの腕に抱き寄せられた。
「ナイスだ弟よ」
「兄さんもナイスキャッチ」
「、ちょっとここで待ってろ」
「え、あ……はい」
有刺鉄線を使って下へと降りたエドワードくんとアルフォンスくんは、外壁の上で大人しくしている私に手を広げた。
「来い。受け止めてやる」
「…………飛び降りろ、って事ですか?」
「大丈夫、ちゃんと受け止めるので」
でもこれ、5mくらいあるよね。
高い場所から飛び降りることに抵抗はないけど、だけどこんな高い場所からは初めてだ。
恐怖が私を襲うが、悩んでいる時間はないんだ。
それに二人が手を広げて必ず受けとめると言ってくれているんだから、信じなきゃ。
私は生唾を飲み込んで、二人に向かって飛び降りた。
ガシャン、と小さな音が響き私は慌てて辺りを見渡す。
が、どうやら門番には聞こえていないようでホッと胸を撫でおろした。
「ありがとうございます、二人とも」
二人がいなかったら私は中に入ることはできなかっただろう。