第9章 第五研究所
元第五研究所に着き、私達は身を隠すために背中を壁にくっつけ、角から顔だけを覗かせる。
使っていない建物の門に憲兵が一人立っている。
「ふーん……、使ってない建物に門番ねぇ……」
「あやしいね」
「どうやって入る?」
「錬成はできませんね。ホテルの部屋と同じで、錬成反応でバレます」
「を囮にしてその間に、とか……」
「ダメです。お咎めを喰らうのが私だけならまだしも、軍が絡んでいるかもしれないとなるとこの件に関わっている人たちや大佐たちにも迷惑が掛かります。それはあなた方も嫌でしょう」
「そう、ですね……」
ただでさえ使われていない建物に侵入すると言うだけで始末書ものなのに、それが賢者の石や軍に関わるとなると始末書どころの話じゃない。
門番もいるとなるとこれは政府レベルということは確実だ。
それこそ処刑されてもおかしくない。
大佐の夢を私が奪っていいわけがない。
だったら、誰にも迷惑のかからない方法を、私だけが責任を負える方法を、考えるしかない。
「……と、なると……この方法しかないよな」
「なにか案を思いついたのですか?」
「まぁ見てなよ」
そう言うや否やエドワードくんとアルフォンスくんは顔を見合わせて頷いた。
打ち合わせも何もしていないのに、アルフォンスくんは壁に背を向けると、低い位置で両の手を組みエドワードくんが組んだ手の上に足を乗せると、アルフォンスくんは勢いよく上へと腕をあげた。
掛け声もないのに、なんて息ピッタリの動きなんだろう。
飛ばされたエドワードくんは高い外壁にある有刺鉄線を解体していく。
「悲しいけどよ、こういう時には生身の手足じゃなくて良かったって思うぜ」
「ははは、同感」
手際が良すぎる。
これも何回か経験しているに違いないな。