第9章 第五研究所
外に出て、彼らのいる部屋へ目をやる。
暫くは大人しく部屋で過ごすだろう。
このまま元第五研究所へ向かってもいいが、何かあった場合を考えると一緒にいたほうがいい。
私は、彼らが行動に移すまでホテルの外で身を潜ませた。
時間にしてどのくらいだろう。
30分くらいだろうか。
窓の開く音で私は顔をあげた。
ロープが勢いよく放たれ、窓の桟に足をかけるエドワードくん。
大人しくしてろって言って30分しか経っていないんだけど。
もう少し時間かけても良かったんじゃないかな。
どこまでもじっとできない兄弟だ。
慣れた手つきで外へでるエドワードくんとアルフォンスくんを見て、日常茶飯事で脱走していた経験があるなと思った。
でなければこんなスムーズにできるものか。
「なんだよ、待ってたのか」
「はい。何かあった場合の保険です。行きましょう」
できるだけ音を立てないように私達は元第五研究所へと向かった。
走っている間、エドワードくんはできれば少佐たちを巻き込みたくなかったと呟いた。
「協力してくれるのはありがたいけど、オレ達がこんな身体になっちまったのはオレ達自身のせいだ。だから、オレ達の責任で元の身体に戻る方法をみつけなきゃならねーよ」
その考えはとても立派で子供とは思えないほど大人びている。
彼らの言い分も分かる。
だからこそ、大人である我々は彼らの危なっかしさに肝を冷やしているわけだが。
こちらの気持ちにまだ目を向けられていないところを見ると、大人ぶっていてもやはり子供だ。
私が護衛でよかった。
今この場で彼らを護れるのは私しかいない。