第9章 第五研究所
――・アールシャナside――
「私は一度外に出ますが、絶対に部屋から出ないように。いいですね」
「はいはい、わかりましたよ」
「もう夜も遅いから気を付けてくださいね」
部屋の扉を開けて、私は兄弟に忠告する。
その声に少尉と軍曹が反応し「どこかに行かれるんですか?」と尋ねる。
「ヒューズさんの家に……。ここ数日まともに帰っていなかったので少しだけ顔を出してこようかと思いまして」
「そうでしたか。詮索してしまい申し訳ありません」
「いえ。二人がいてくれて心強いです。こうやって甘える事が出来ますから。暫くの間、よろしくお願いします」
「はい!!」
敬礼をして返事をする二人に心が痛まないわけではない。
彼等の良心につけこんでだましているのだから。
危ない場所へ子供が行くことの危険性を考えると、少佐が強く注意するのも頷ける。
しかし、ここまできて何もしないと言う選択ができない兄弟に気持ちも分かる。
なにより私の推測が正しければ、兄弟があの場所へ行ったなら絶対に姿を現すと思った。
私達を、兄弟を監視している存在が。
突き止めて問いただしたい。
なぜ、監視をするのか。
なぜ、邪魔をするのか。
なぜ……。
そのために私は彼らと一緒に元第五研究所へと向かう。
真実を知るために。