第9章 第五研究所
「刑務所がらみって事はやはり政府も一枚かんでるって事ですかね」
「一枚かんでるのが刑務所の所長レベルか政府レベルかはわからないけどね」
「………なんだかとんでもない事に首をつっこんでしまった気がするんですが」
「だから言いましたよね。あなた方のためにも聞かなかったことにしてくださいって」
少しだけ強い口調のにロス少尉とブロッシュ軍曹は怯んだ様子を見せる。
だが、一度聞いてしまったことを無かったことにするのは案外難しいもので、お人好しの二人のことだから見過ごせなかったのかもしれない。
「手に負えないと思ったら言ってください。逃げ道くらいな作ってあげられます」
「中尉……」
「どうしよう兄さん、さんがかっこいいよ‼」
真っすぐな眼差しで二人を見つめるは、アルの言う通りかっこいい女性という言葉をそのまま表したようで、心臓が締め付けられた。
鷲掴みにされるってこんな感じなんだろうか。
「話を戻すが、現時点ではあくまで推測で語っているにすぎん。国は関係なくこの研究機関が単独でやっていた事かもしれんしな」
「それを確かめるためにここ数日、軍法会議所に通い詰めていたのですが、有力な情報は得られませんでした。両親に話を聞けたらいいのですが、生憎行方知らずですので……」
オレ達が落ち込んで不貞腐れている間にはできることをしようと行動していた。
オレ達よりも負っている傷はでかいはずなのに。