第9章 第五研究所
「そういえばさんは?」
「中尉はここ最近、軍法会議所に出入りしているとヒューズ中佐から聞きました」
「軍法会議所?なんで?」
「さぁ、それは我々にも……。ただ、思いつめた顔をしているとのことでした」
「仕方あるまい。彼女の両親はドクター・マルコーの部下だったのだからな。真実とは時として残酷なものよ」
そうか、の両親は賢者の石の研究に携わっていたのか。
オレたちよりもショックだったはずなのに……。
それを見せないで、それどころかオレたちに気を遣ってくれた。
あいつは今、どんな気持ちでいるんだろう。
人の心配をするより自分たちの事を考えさない、とかいいそうだけど、それはあんたにも言えることなんじゃないのか。
の顔が見たい、今すぐ。
「あの……、なんで扉壊れてるんですか?」
その時だった。
困惑しているの声がした。
部屋の外では、眉間に皺を寄せ「修理代……」と呟いている彼女の姿があった。
思ったより元気そうに見えたが、それはそう見えるだけだ。
「!!」
「さん!!」
「声が大きいです。聞こえてますよ」
「あの、えっと……その、」
なんと切り出せばいいか分からないのはオレだけじゃなかったみたいで、しどろもどろになるアルに何かを察したのか「私は大丈夫ですよ」と小さく笑みを零した。
それは強がりなんじゃねえのか。
そう聞きたいの聞けないのは、の雰囲気がそれを許さないと言っていたから。