第9章 第五研究所
天井のシーリングファンだけが動いている音がする。
それ以外の音は、この部屋ではしなかった。
重たい空気が漂う中、俺は静かに口を開いた。
「………しんどいな」
それ以上の言葉は出なかった。
口にしてしまえば、全てを肯定される気がして今の今まで口にしてこなかったのに、たぶん自分でも気が付かないうちに限界を迎えていたのかもしれない。
「なんかこう……手の届く所に来たなと思ったら逃げられて、それの繰り返しで。やっとの思い出でつかんだら、今度はつかんだそいつに蹴落とされてさ……。神サマは禁忌を犯した人間をとことん嫌うらしい」
誰かに話して少しでも楽になりたかったのか、それともただ吐露した気持ちを聞いてほしかっただけなのか。
多分どちらもだろう。
アルも同じ気持ちだと思ったから、共有したかっただけなんだ。
「オレ達、一生このままかな」
だから、こんなことを口にしてしまった。
イエスともノーとも答えられない疑問を投げて、オレはどんな返答を待っていたんだ。
酷なことを聞いてしまった。
と同時に、長年聞きたくても聞けなかったことが頭を過った。
ずっとずっと言いたくてでも、言えなくて。
何でそれが今頭を過ったのかなんて考えなくても分かった。
元の身体に戻れなかったら、アルは一生鎧の姿のままで。
そういう身体にしてしまったのは―――……。
「―――なぁ、アル。オレさ……ずっとおまえに言おうと思ってたけど怖くて言えなかった事があるんだ……」
もしアルの返答がオレの想像通りのモノだとしても、それを受け入れるしかない。
だって、全部オレが悪いんだから……。