第9章 第五研究所
「お二人とも」
私はロス少尉とブロッシュ軍曹に向き直り、頭を下げた。
「この事は誰にも言わないでください」
「しかし……」
「お願いします。あなたがたのために、彼らのために、聞かなかったことにしてください」
「それは、命令ですか?」
「いいえ、違います。ただの私個人の"お願い"です」
私の言葉にロス少尉は軽く息を吐くと「分かりました」と首を縦に振った。
これ以上彼らを巻き込むわけにはいかない。
彼らがそれを誰かに話し、上層部の耳に入ったら良くて除隊、悪くて処刑だろう。
それに、軍の機関、上層部がこのような研究をしていたと市民に知れ渡れば、それこそ国家が揺らぐ騒動となる。
下手をすれば国内戦争にまで発展し最悪、国家錬金術師が兵器として駆り出されるだろう。
もう二度と罪のない人たちの命を失うわけにはいかない。
国家錬金術師に、彼らに、エドワードくんに、そんなことはさせられない。
彼らには、綺麗なままでいて欲しいから。