第9章 第五研究所
賢者の石に材料は生きた人間。
その事実が、現実が、重たく伸し掛かり部屋の中を息苦しくさせる。
「たしかにこれは知らない方が幸せだったかもしれないな」
小さく呟いたエドワードくんの言葉が部屋に響く。
「しかも、石を一個精製するのに複数の犠牲が必要って事だ……!!」
マルコーさんの家で見た賢者の石。
あれも人の命で作られたものということになる。
マルコーさんが研究していたものは賢者の石で、私の両親は彼の部下で、つまり……私の両親は……。
「そんな非人道的な事が軍の機関で行われているなんて……」
「許される事じゃないでしょう!」
軍曹と少尉の言葉にずきりと心臓が痛んだ。
そう、だ。
許されることじゃない、同じ人間のすることじゃない。
だけど、私には両親を非難することはできない。
こうやって唇を噛みしめて悔しさや怒りに震える資格なんてない。
だって、私もたくさん人を殺しているから。
親子で人殺しだなんて、呆れを通り越して笑えてしまう。