第8章 賢者の石
そして、解読をはじめて丸10日が経ったこの日。
一つの法則に初めに気づいたのはエドワードくんだった。
「なぁ、アル、。このレシピの材料ってさ……」
エドワードくんが指さすレシピに私とアルフォンスくんは眉をしかめた。
似たようなものを見た記憶がある。
散らばった資料の中から見つけるのにそう時間はかからなかった。
なぜなら、それは一枚や二枚ではなかったから。
「材料の分量に違いはあれど、載っているものはほぼ一致していますね」
「それだけじゃないよ。こっちのものはまったく一緒なんだ」
「………糸口が見えて来たな」
途方もない作業に見えた解読は、一つの兆しが見えた瞬間に呆気ないほどするすると問題が解けて行った。
献立の一つ一つ、材料の一つ一つ、分量の一つ一つを読み取っていくこと数時間。
バラバラだったパズルのピーズがはまっていくような、そんな感覚だった。
「と、けた……?」
「でも、これって……え……まってよ、どういう……」
「……うそ、だろ?」
書きなぐられた紙たちがテーブルに散乱する。
そこに書かれた内容に私達は言葉を失った。
冷たく重い鉛を飲み込んだように腹の奥が苦しく、心臓は内側から殴ってるのではないかと思うほど早く脈を打ち、喉は締め付けるほどカラカラに乾き、唇の内側で唾液が粘っこく固まりはじめ、舌は痛いくらいにひきつり、全身からは汗が噴き出るように流れている、のにも関わらず、熱いような寒いような、そんな感覚が、全ての血液や細胞を襲った。