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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第8章 賢者の石







「まったく……、ただでさえ忙しいところに第一分館も丸焼けになっちまってやってらんねーよ」
「第一分館?」
「ああ。軍法会議所に近いってんで、あそこの書庫にゃあ過去の事件の記録やら名簿やら保管してたからよ。業務に差し支えて大変だよ」
「へーーーーーーーーー……」

兄弟と私の視線は一人の人間へと向けられた。

「えーーーーーーーーーーーーー!?」
「シェスカさん、お聞きしますが刑事記録に目を通されましたか?」
「はい……、一応軍の刑事記録も読んで覚えてますけど……」
「どうだろう中佐。この人、働き口探してんだけど」
「記憶力がいいことは私たちのお墨付きです」
「え?この嬢ちゃんそんなにすごい特技持ってんのかよ!?そりゃ助かる!」

そこからは早かった。
今すぐ手続きをすると言い、ヒューズさんは彼女の首根っこを掴むと「わははははは」と大きな声で笑い、まるで人さらいかのように連れ出して言った。
嵐のようなひと時だったけど、シェスカさんは最後に「自信を持って頑張る」と言った。
それを聞けただけでもちょっと嬉しかったりもして。

「"何かに一生懸命になれるって事は、それ自体が才能"か。言うねぇ、弟よ」
「どっかの誰かさんを見てるとね、心の底から思うよ」
「へへっ。そんじゃそのどっかの誰かさんは引き続き一生懸命やるとしますよ」

2人の雰囲気が先ほどよりも明るくなったような気がする。
私も気合を入れ直すために自分の頬を強く叩いた。





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