第8章 賢者の石
「そう言えば、なにか収穫はあったか?」
食事を終え、軽くお酒を飲んでいるヒューズさんが尋ねた。
同じく軽くお酒を飲んでいる私は「いいえ」と首を横に振る。
「地道にやるしかないみたいです」
「そうか。まぁ、また何かあったら言ってくれよ。できる限り協力はするから。あとは、あまり無視してくれるなよ」
「ヒューズさんも無理はしないでくださいね。ヒューズさんが倒れたらグレイシアさんとエリシアちゃんが悲しみます」
「お前さんは悲しんでくれないのか」
「そりゃ悲しみますよ。いっぱい泣いちゃいます。子供みたいに」
「ははっ。の泣き顔は見たくねえな。じゃあ、倒れない程度に頑張るよ」
「2人とも。明日も早いんでしょう。日付、変わっちゃいますよ」
もう少しお話していたかったけど、時計の針は確かに12時を指そうとしていた。
私たちは顔を見合わせて「寝るか」というヒューズさんの言葉に頷いた。
もっといろんなことを話したかったけど、急ぐ必要はない。
だって、明日もまたここに帰ってくるのだから。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
この家を出てもう数年になるのに、部屋の中はとても綺麗で放置された様子は一つもなかった。
いつ帰ってきてもいいようにグレイシアさんが掃除をしてくれていたんだ。
「……っ」
ベッドにダイブして溢れる涙をこらえる。
ああ、つい最近も同じような温かさに触れたな。
すぐ近くにあったんだ。
私が求めていたものは。
彼らはずっと前から与え続けてくれていたのに、知らないふりをして気付かないふりをして見て見ぬふりをし続けていた。
ここにあったんだ。
―――私の帰る場所。