第8章 賢者の石
「久しぶりね。元気そうでよかった」
ヒューズさんの家に帰るとグレイシアさんが柔らかい笑顔で迎えいれ、温かいご飯を用意して待ってくれていた。
グレイシアさんは前よりもっと綺麗になっていて少し驚いてしまった。
「エリシアちゃんは?」
「待ってるって言ってたんだけど、ついさっき寝ちゃった」
「もう少し早く帰ってくればよかったです」
「でも、しばらくはここにいるんでしょ?」
「え?」
「マースから聞いているわ」
どうやらグレイシアさんは、私はエルリック兄弟の護衛をしていることをヒューズさんから聞いていたようだ。
だけど、スカーとの戦いで大怪我を負ったことは知らないみたいだ。
知っていたら今頃心配して説教をしていたに違いないから。
「少し痩せたんじゃない?ちゃんと食べているの?夜は眠れてる?」
「ここ最近はちゃんと食べてますよ。睡眠は、そこそこ……です」
「そう。でも、前よりは眠れているようでよかった」
安心したように息を吐いて、グレイシアさんは私のお皿に料理をよそった。
どうやら私が帰ってくるとヒューズさんから聞いて、張り切って作りすぎてしまったらしい。
テーブルに並ぶ豪華な食事は3人で食べるには多いが、それは愛情の証。
言葉にならない感情が押し寄せ胸が熱くなり、それを口にしてしまえば泡沫のごとく消えてしまいそうで、そっと大事に奥底へとしまった。