第1章 三人の錬金術師
「いやーーー。さすが教主様!いい話聴かせてもらったわ」
エドワードくんはわざとらしく拍手をし、アルフォンスくんは鎧の留め具を外していく。
「あなたの言う通り、盲信している信者に私達の言葉は届かないでしょうね。……しかし」
「彼女の言葉にはどうだろうね」
アルフォンスくんが鎧の腹部を完全に取り外すと、そこには顔を青ざめて震えているロゼさんが入っていた。
鎧から身を乗り出して叫ぶ。
「教主様!!今おっしゃった事は本当ですか⁉私達をだましていらっしゃったのですか⁉奇跡の業は……神の力は、私の願いをかなえてはくれないのですか⁉」
生きる者には不滅の魂を。
死せる者には復活を。
太陽神レトの教えを、祈り信じ続けた。
そうすれば救われると、本気で信じていたから。
「あの人を蘇らせてはくれないのですか⁉」
瞳に涙を溜めたロゼさんの悲痛な叫びが部屋に響く。
最初こそコーネロは言葉に詰まっていたが、いやらしい笑みを浮かべロゼさんに囁いた。
賢者の石があれば恋人を蘇らせることも可能かもしれない、と。
人の心の弱さに付け込んだ、悪魔のような言葉にロゼさんの気持ちは揺れ動く。
「ロゼ、聞いちゃダメだ!」
「ロゼ、いい子だからこちらにおいで」
「行ったら戻れなくなるぞ!」
「さぁどうした?おまえはこちら側の人間だ」
手を差し伸べるコーネロ。
ロゼさんの顔は歪み、カタカタと身体を震わせている。
葛藤しているんだ、目の前の真実と己の欲望に挟まれて。
なかなか決断できない彼女の姿を見て、
「行けばいいでしょう、あなたの信じる神とやらの場所に」
彼女を突き放した。