第1章 三人の錬金術師
コーネロが持っている「賢者の石」は伝説の中だけの代物と言われている幻の術法増幅器。
錬金術師がその石を使えば僅かな代価で莫大な錬成をすることができる。
兄弟が探していたモノ。
自身の身体と弟の身体を元に戻せる可能性のある代物。
兄弟がそれを欲しているように、コーネロもまた賢者の石で何かを望んでいる。
コーネロが望むもの。
それは、死をも恐れぬ最強の軍団。
信者と書いて儲けると読むが、コーネロが欲しかったのはお金だけでなく、国家転覆を可能にする「人間」という資源そのものだった。
だが、エドワードくんからしたらそんなものは大した問題ではないだろう。
国とか軍とか、彼にとってはどうでもいいことで知った事ではないらしい。
大佐がこれを聞いたら心底楽しそうに笑うんだろうな。
「単刀直入に言う!賢者の石をよこしな!そうすれば街の人間にゃあんたのペテンはだまっといてやるよ」
交換条件をだすエドワードくんだったが、コーネロは応じようとしない。
そればかりか、街の人たちは自分に心酔しきっている忠実な僕、だまされきっている馬鹿信者と嘲笑しだす。
鎧の中で、一番の信者であろう彼女が聞いていると知らずに。