第8章 賢者の石
シェスカさんがマルコーさんの研究書を複写し終えたのは、それから5日後のことだった。
テーブルの上に置かれた大量の資料に私達はただ驚くことしかできなかった。
これだけの物をたった5日で……。
集中力もそうだが、記憶力がずば抜けている。
それに加え、一字一句間違えていないというのだから驚かずにはいられない。
「世の中にはすげー人がいるもんだなぁ……」
エドワードくんはそう呟いた。
エドワードくんも大概すごい人だが、それは錬金術師としてであって、シェスカさんのすごさは彼とのそれとは別ベクトルのすごさがあった。
「こんなに量があったんじゃ、これ持って逃亡じゃ無理だったんだねマルコーさん」
「これ本当にマルコーさんの?」
「はい!まちがいなく!ティム・マルコー著の料理研究書"今日の献立1000種"ですっ!!」
今日の……献立……?
資料を手にして中を見てみると確かにそれは料理の献立が書かれていた。
なるほど、マルコーさんはこんな風に研究書にしたのか。
一般の人から見たらただの献立にしか見えないだろう。
その証拠にロス少尉やブロッシュ軍曹は「どこが重要書類なんだ」「無駄足だった」と言っている。
「いいえ、2人とも。これは間違いなくマルコーさんの研究書です」
「あんたすげーよ。ありがとな」
早速私達は資料を持ち、中央図書館へと向かう。
あそこには辞書や参考資料などが腐るほど揃っている。