第8章 賢者の石
しかしやはりと言うべきか、本館にもマルコーさんの蔵書はなかった。
本館も分館も新しく入ってきたものは必ずチェックし目録に記録している。
それがないということは資料は存在しないか、火事で焼失したかのどちらかだ。
目に見えて落ち込むエドワードくんとアルフォンスくんはフラフラになりながら図書館を後にした。
ここまできて振りだし、か……。
運命というものはどこまでも彼らを見放すのだな。
「あの……」
少しでも何か手掛かりになる情報がないものか。
私はそう思い、受付の女性に声を掛けた。
もし何かマルコーさんの資料に関する情報があったらすぐに連絡してほしい事、そしてその資料について知っている人がいたらそれも併せて連絡してほしい事。
それらを伝え、本館を後にしようとした時だった。
「シェスカなら知っているんじゃないか?」
1人の男性がそう呟いた。
「どなたですか?」
「以前まで第一分館に勤めていた者です。訳あって仕事をクビになってしまったのですが……」
「その方は、分館の蔵書に詳しい人なんですか?」
「詳しい、というか文字通り"本の虫"です。彼女の住所なら調べればすぐにわかりますが……」
「今すぐ調べてください」
勝手に住所を調べてしまうのは気が引けたが、このチャンスを逃す訳にはいかない。
彼らが目的を果たすためなら、使える手段は全て使う。
護衛の仕事だとか大人の務めだとかそんなのじゃない。
彼らと共に過ごすうちに情が湧いてしまった、それだけだ。