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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第8章 賢者の石






駅前に停めてある軍の車に乗り込み、私達は中央図書館を目指す。
その間、ロス少尉とブロッシュ軍曹はエルリック兄弟を見て、というよりアルフォンスくんを見て「何故、鎧の姿を?」と至極真っ当な疑問を口にした。
顔を見合わせる兄弟。

「「趣味で」」

息ピッタリな返答に私は静かに笑った。
他になにかいい言い訳があるのか、という表情で私を見る兄弟だったけど、確かに他にいい言い訳はないな。
2人も深追いしてくる様子はない。

「そろそろ着きますよ」

窓の外を見ると、近づいてくる中央図書館。
国内最大の蔵書量を誇る国立中央図書館。
全蔵書を読み切るには人生を何度くり返してもまだ足りないと言われている程。
私たちが目的とする第一分館は西隣に位置する建物。
ここには様々な研究資料や過去の記録、各種名簿等が収められている。
………はずだった。

「………なんですか、これは」

目の前に広がる光景に私も兄弟も何も言えずに立ち尽くすしかなかった。
焦げ臭い匂いが鼻の奥を掠める。

「つい先日、不審火によって中の蔵書事全焼してしまいました」

ロス少尉が静かにそう言った。
なんだろう、このモヤモヤした気持ち。
こんなタイミングでこんなことって……。
まるで誰かの手によって拒まれているような気がしてならない。
私の考えすぎだろうか。

「兄さん……」

俯いて手の拳を握り締めるエドワードくんの身体は悔しさで震えている。
漸く掴んだ手掛かりだというのに、また降り出しに戻ってしまった。
マルコーさんの思いも……。

「………とりあえず本館に行ってみましょう。もしかしたらそちらにある可能性もあります」

そんな都合よく本館に移動しているなんてことあるわけないと思うけど、今はその「運」にさえ縋りたかった。



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