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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第7章 家族の待つ家







「そこの炭鉱の人達が上からの締め付けで困ってて、助けてくれって言われたんだけど、兄さん最初は助ける気がさらさら無かったんだ。だけど、そこの親方が"炭鉱が俺達の家でカンオケなんだ"って言葉を聞いて、結局助けちゃったんだよね。かなり無茶してさ」
「かっかっか!そうかい"俺達の家"かい!そうだね……。帰る家の大切さや無くなるつらさはおまえ達は身に染みてるもんねぇ」

引き返さないためと、前だけみるためと、生まれ育った家を燃やした兄弟。
覚悟以上に心に背負った想いは一体どれ程のものでどれほど苦しかったか、それは彼らしか知り得ないことで、理解できたとしても全て理解することはできない。
それを寂しいと思ってしまうのは、泣いてしまいた気持ちになるのは、間違っているのだろうか。

「だから、いつも本当の家族みたいに迎えてくれるばっちゃんとウィンリィには感謝してる。口に出さないけど兄さんもね」

アルフォンスくんは言った。
それでもやっぱり生まれ育った家が無いというのが現実だけど、家を焼いたことに後悔はしていない。
だけど、時々無性に泣きたくなる事はある、と。

「いっそ、一度思い切って泣いちゃえばふっきれるかもしれないけど、この身体じゃ泣くに泣けない」
「泣ける身体があるのに泣かないバカもいるしね。ほんと、強がっちゃってさこのバカは……」

優しい眼差しでエドワードくんを見つめるウィンリィさん。
その眼差しはまるで……。

鉛を飲み込んだかのように腹の底がずしりと重くなった。
違う、その感情は"間違っている"……。
それを望んではいけない、私はそっち側の人間じゃない。
ぐっと腹を抑えて私はゆっくりと息を吐いた。



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