第7章 家族の待つ家
「よく眠れたかい?」
導かれるように椅子に座って朝ごはんを食べていると、ピナコさんが声をかけてきた。
「あんたを起こしに行こうとしたら、エドたちが"眠っているならそのままにしておいてほしい"って言ってきてね。詳しい事情は聞かなかったが、ここ最近ちゃんと寝ていなかったのかい?」
キセルをふかすピナコさんの言葉に、私は悩んだ末一度だけ頷いた。
ほんとうはもっと長い間眠れていない。
だけど、それを言ってしまえばきっと心配させてしまう。
「深くは聞かないよ。あいつらも深くは言わなかったからね」
「ありがとうございます……」
「でも、よく眠れたみたいでよかったよ」
そう言ってピナコさんは作業へ戻っていった。
何かしらの事情を抱えていると言うことはきっとピナコさんは気が付いただろう。
それでも深堀してこないのは、私がそれを望んでいないということを理解したからだろう。
そして兄弟もまた理解したからこそ詳しいことを彼女には話さなかった。
気を、遣わせてしまったな。
まだ暖かさの残る朝ごはんをゆっくりと味わいながら、私は小さく鼻を啜った。