第1章 三人の錬金術師
「へーーー。ひどい神もいたもんだ」
本当その通りですね、アルフォンスくん。
地面に倒れていたはずのアルフォンスくんは、ゆっくりと起き上がると、男が持っていた拳銃のリボルバーに手を掛けた。
リボルバーを抑えてしまえば、そう簡単に引き鉄は引けない。
撃ったはずの人間が動いていることに驚かない人はいないだろう。
現に教主側の彼等の目は大きく見開かれ、隙だらけだった。
男の胸倉を掴み、そのまま地面に叩きつければ背中に伝わる衝撃にやられたのか、気絶してしまった。
「どどど、どうなって……」
恐怖で震えるロゼさんに、アルフォンスくんは鎧の中を見せた。
そこは真っ黒い空洞があるだけ。
空っぽの中身。
人など誰一人入ってなどいない。
「これはね、人として侵してはならない神の聖域とやらに踏み込んだ罪とかいうやつさ。ボクも兄さんもね」
「エドワード……も?」
「ま、その話はおいといて」
触れられたくない心の弱さは誰にでもある。
とくにエドワードくんが抱く弟への罪悪感は想像もできないほど強く深く重いものだ。
あの時見せた表情がそれを物語っていた。
「とりあえず、コーネロの行いがどんなものか知ることができましたね」
「そんな!何かのまちがいよ!!」
ここまでされてもまだコーネロのことを信じるとは。
疑いたくない気持ちは理解できるけど、
「ロゼ、真実を見る勇気はあるかい?」
「……真実?」
そろそろ目を覚まさなくてはいけない、彼女も街の人たちも。
あなた方が信じている神が、いかに滑稽な男なのかを。