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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第7章 家族の待つ家






――エドワード・エルリックside――



夕食後、暇つぶしがてら部屋のベッドで寝転がりながら本を読んでいたオレはふと窓の外に目を向けた。
この部屋から見える景色は昔と何も変わっていない。
うっすらと見える小さな丘の上にはオレたちの家があった。
今は焼け跡しか残っていない。
国家錬金術師になった日、ここを旅立つ日に家を燃やした。
生まれ育った家を、母さんとアルと過ごした思い出の場所を。
戻る場所はなくていい、それがオレたちの覚悟。

らしくもなく感傷に浸ってしまった。
大きく息を吐いて、オレはベッドから起き上がり1階へと向かった。
確か、オレンジジュースが少し残っていたような気がする。
乾いた喉を潤そうとキッチンへ行った時、外から微かに物音がした。

アルか?
いや、アルは今あんな体だから1人で歩けるわけがない。
だったら少佐かのどっちかか。

コップにオレンジを注ぎ一気に飲み干した後、玄関の扉を開けると、デッキに横たわるの姿が目に入り、慌てて彼女の身体を揺らす。

「おい、!!」

大きく揺さぶっても彼女の閉じられた瞳は開かない。
まさか、スカーとの戦いで負った傷が……?
どくどくと心臓が大きく脈打っていたが、彼女のことをよくよく観察すると規則正しく呼吸していることに気が付いた。
耳を澄ませば、小さな吐息が漏れているだけで、これってつまり……。

「寝てるだけかよ……」

先ほどまでの緊張がゆるみ、同時に安堵のため息が零れその場にしゃがみこんだ。
よかった、何かがあったわけじゃなくて。



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