第7章 家族の待つ家
「あなた方の娘さんは、あなた方の血をちゃんと受け継いでいます」
人を助けるために、今もエドワードくんを助けるために夜通しで頑張っている。
イシュヴァール人を助け続けたあなた方と同じように。
深々ともう一度頭を下げ、私はピナコさんたちの家に戻ろうとした時、デンが私の服を引っ張った。
まだどこかへ連れて行こうと言うのか。
大人しく着いて行くと、ロックベル夫妻のお墓からさほど遠くない場所で彼は立ち止まった。
「トリシャ・エルリック……。このお墓……」
「母さんの墓だよ」
「!!エド、ワードくん……」
いつの間にか私の数歩後ろにエドワードくんが立っていた。
片足が義足の彼はぎこちない歩き方で私の隣に立ち、静かに墓前を見つめる。
「どうしてここに……?」
「おまえの姿が見えないから、少佐に聞いたら散歩に出かけたって」
「追いかけて、きたのですか」
「………別に、そうじゃねえけど」
唇を突き出してごにょごにょと歯切れの悪い物言いをする彼に、もしかしたら心配をかけてしまったのかもしれないと思った。
私のことなんて気にしなくてもいいのに。
彼らの優しさに触れるたびに、彼らがかわいそうに見えてきて心が苦しくなる。
優しくしないでほしい。
私にそんなものは必要ないから。
彼らの優しさを無駄にしたくないから。
だから、その優しさは私ではな誰かのために使って欲しい。
「そろそろ戻りましょう。夕飯の準備をしなければ」
「ああ、そうだな」
踵を返すとちょうど真東を向いているのか、足元から2つの長い影が伸びている。
遠くの方で子供たちの楽しそうな声が聞こえ、夕方の風が草木を撫で、私と彼の髪の毛を揺らした。
私にとっては、少しだけ寒い風だった。