第7章 家族の待つ家
外へ出ると、デンは勢いよく走り出す。
「ま、待ってください……。そんなに引っ張ったら転んじゃいます」
「わんっ」
「お気にいりのお散歩コースがあるのでしたら、エスコートしてくださいますか」
「わんっ!」
軽快な足取りでデンは私の前を歩き、時折後ろを振り返っては私がちゃんとついてきているかを確認し、その様子があまりに可愛くて笑みが零れる。
「ちゃんといますよ」
彼の後をただ着いて歩くこと数分、目の前に見える景色に私は言葉を失った。
これを見せるために私を連れて来たのだろうか。
デンを見ると、デンもまた私を見ていた。
「………そう、ですか」
頭を撫でると、小さく尻尾を振った。
「ここに、彼らが眠っているのですね」
一つ一つお墓に刻まれている名前を確認し、そして足を止める。
ユーリ・ロックベル。
サラ・ロックベル。
ウィンリィさんのご両親のお墓だ。
イシュヴァール殲滅戦の時、イシュヴァールを助け続けた医者夫婦。
戦争の場において彼らの行動は、間違っているようで間違ってなどいなかった。
「医者としての責務を果たしたあなた方は、とても優秀で素敵でした」
一度だけ彼らにお会いしたことがある。
国家錬金術師の誰かの錬成で発動した爆破に巻きこまれ、右足に怪我を負った時に治療をしてくれた。
あの時の傷は時間と共に少しずつ治り、今は傷の跡は消えさり綺麗になっている。
「ありがとうございました」
できれば直接お会いしてお礼を言いたかった。
だけどそれはもう叶わない。