第7章 家族の待つ家
夜はとても長い。
永遠に続いてしまうのではないかと思うほど。
ウィンリィさんは作業をしに2階へと行き、私はまた1人になった。
眠りたくない夜をどう過ごそうかと思い悩んでいると、リビングの方からアルフォンスくんの声が聞こえた。
「さん?」
どうやら彼は私とウィンリィさんが外に出て行くのを見ていたらしい。
「外、寒かったですか?」
「少しだけ。でも、ウィンリィさんからホットミルクを頂いたので、身体は温まりました」
「そっか」
アルフォンスくんの柔らかい声色は、静かな空間に溶け込んで消える。
私もアルフォンスくんもそれ以上何も言葉を吐きだすことはなかった。
ただ外から窓をくぐる月明りを2人でぼんやりと眺める。
どのくらいの時間そうしていただろう。
ふいに、アルフォンスくんが口を開いた。
「夜って、すごく長いですよね」
眠ることのできない身体の彼は、ただこうして朝を待つしかない。
何日も何日も何日も、襲い掛かる寂しさや不安、恐怖と戦って、彼はずっと1人でそれらに耐えてきた。
考えるだけでも気が遠くなる時間だ。
怖い夢を見るから眠りたくない私が、彼の言葉に同情していいのかわからず、どう答えていいか悩んでしまった。
「さん」
「はい」
「さんが眠くなるまででいいから、ボクと一緒に居てくれませんか。1人の夜は……」
言葉尻が萎んでいき、最後の方はなんと言っているか聞き取れなかったが、聞き取れなくてもわかった。
どんな姿だろうと、どんなに大人びていようと、どんなにフィジカルが強くとも、彼はまだ14の少年だ。
怖いものがあって当然だが、彼の幼い一面を垣間見て私は少し安心して小さく笑みを零した。