第7章 家族の待つ家
「眠れないんですか?」
「まぁ、そんな感じです」
眠るのが怖いだなんて言えなかった。
言葉を濁す私を見て、何を思ったのか彼女は一度家の中に入って行き、しばらくするとゆらゆらと湯気が立ち上がる2つのマグカップを持って戻って来た。
「ホットミルクです!眠れないときはこれが一番!!」
「……あ、りがとうございます」
ウィンリィさんからマグカップを受け取ると、掌がじんわりと温もりに包まれ、ゆっくりと一口飲み込むと身体もぽかぽかと温かくなる。
「おいしいです」
「よかった!」
くしゃりと自分の顔が歪むのが分かる。
わけもわからず泣いてしまいたい。
腹の底を渦巻く真っ黒い感情を吐き出してしまいたい衝動を抑え、唇を噛みしめる。
「……そろそろ中に入りましょう。風邪を引いてしまいます」
まだ半分も残っているホットミルクを一気に飲み干して、すっと立ち上がると、ウィンリィさんも「そうですね。私も作業に戻らなきゃ」と言って、まだ中身の入っているマグカップを持って家の中に戻って行った。
その背中を少し見つめ、私も少し遅れて家の中に入った。