第7章 家族の待つ家
「"エルリック兄弟"……。とりわけ兄の"鋼の錬金術師"と言えば中央でも名が通っておりましてな。もっともそれゆえトラブルにも巻き込まれるようですが……。大丈夫ですよ。あの兄弟は強い」
「強い……かい」
少佐の言葉にピナコさんはぽつりと呟き、懐かしむように静かに笑った。
そして静かに語った。
4年前に人体錬成を失敗し左腕を持って行かれ、弟の魂を錬成するために右腕を犠牲にした時も、軍の狗になると決めた時も、大人でさえ悲鳴をあげる機械鎧の手術に耐えた時も、あんな小さな身体のどこにあれほどの強さがあるのかと思った。
だからこそ、そこまで強いからこそどこかで何かの拍子にくじけてしまった時、立ち直れるだろうかと心配になる。
そう言った。
「ピナコさんにとってはお孫さんのようなものですか」
「ああ。あの2人が生まれた時からずっと成長を見て来たよ。なんせあたしゃああの子らの父親とは昔っからの酒飲み仲間でね。……奴め。妻も子供も置いてこの街を出て行ったきり今はどこをほっつき歩いてるのやら……。生きてるのか死んでるのかもわからん」
「父親と言えば、ウィンリィ殿の両親は……?」
「イシュヴァールの内乱で死んだよ」
ウィンリィさんのご両親は外科医だった。
医者の手が足りないと、戦地に赴いてそして巻き込まれてしまった。