第1章 三人の錬金術師
ペテン野郎。
彼の発言に腹を立てるロゼさん。
気持ちは分かるが事実だ。
ただ……。
「法則を無視してんだよねぇ」
「うーーーーーーん、それだよな」
「法則?」
ロゼさんは首を傾げる。
一般の人が見たら、錬金術というのは無制限になんでも出せる便利な術だと思われているが、実際にはきちんと法則が存在している。
大雑把に言えば、質量保存の法則と自然摂理の法則。
術師の中には四大元素や三原質を引き合いに出す人もいるが。
「要は、質量が一の物からは同じく一の物しか錬成できないと言う事です。水の性質の物からは同じ水属性の物しか作り出せません」
「つまり、錬金術の基本は"等価交換"!!何かを得ようとするなら同等の代価がが必要って事だ」
その法則を、コーネロは無視して錬成している。
ロゼさんから見ればきっと、それこそが「奇跡の業」だと言うだろう。
だが、彼等は違う。
錬金術の基本を無視して錬成ができるとなると、思い浮かぶ代物が一つだけある。
「ビンゴだぜ!」
兄弟たちが旅をしている理由。
ずっと探し求めている物。
もし本当にこの世にあるなら、この目で見てみたい。
「おねぇさん。ボク、この宗教に興味持っちゃったなぁ!ぜひ教主様とお話したいんだけど、案内してくれるぅ?」
「まあ♡やっと信じてくれたのですね!」
瞳を輝かせる彼女に、私は心配になってしまう。
こんな簡単に、何一つ疑うことなく信じてしまうなんて。
「……だから付け入れられていいように使われているんでしょうね」
なんてかわいそうな人。
なんて愚かな人。
そんな人を騙すだなんて、なんて酷い人だろう。