第1章 三人の錬金術師
広場は既に人で溢れていた。
これだけ人が集まっていたら、爪先で立ったとしても何も見えない。
すると、隣にいたエドワードくんは持っていたトランクを踏み台代わりにし、その上に乗っていた。
その手があったか。
「……なんだよ」
「いえ、感心しました」
「馬鹿にしてんのか?」
「褒めてます」
私もトランクの上に乗れば、視界は随分とクリアになる。
コーネロは、街の人たちが投げる花の一つを手にした。
それは本当に小さな花だったが、優しく手で包み込んだ瞬間、眩い赤い光が走った。
そして小さな花は、綺麗な向日葵へと変化する。
大きな歓声を聞きながら、思う事は一つ。
「錬金術ですね」
「ですよね」
あの赤色の光。
どう見たって変成反応だ。
しかし、錬金術というにはどうにも……。
「法則がなぁ……」
「あら、皆さん来てらしたのね」
「はい、彼の"奇跡の業"というものをこの目で見たくて」
「どうです!まさに奇跡の力でしょう。コーネロ様は太陽神の御子です!」
私達に彼の力を知ってもらえたことが嬉しいのか、ロゼさんは満面の笑みを浮かべている。
本当に奇跡の力だと信じているところ悪いが、これはどう見ても錬金術師で、コーネロはペテン師だ。
しかし、今それを彼女に伝えたところで信じてもらえないだろう……と考えていたのに、エドワードくんは私が考えていることと同じことを口にした。