第6章 希望の道
「ご心配なく、あなたを連れ戻しに来たんじゃないから。あなたがいなくても、あなたの部下が後を継いでよくやってくれてるわ」
「まさか……まだ、あんな物を作り続けているのか!?」
「あら。賢者の石の製造のノウハウを教えてあげたのは私達だって事を忘れてもらっちゃ困るわね」
彼女は言った。
私がいてもいなくても、資料があってもなくても、研究には差し支えない。
ただ、その資料をあの子たちに見られるわけにはいかない、と。
「あなたも薄々感付いたから研究所から逃げた……。そうでしょう?」
「やはり、そうだったのか。わたしの思い違いであってほしい、悪夢であってほしいと願っていたが……。この悪魔め……!!」
サイドテーブルに拳銃があるのを目の端で捉えた。
殺せなくても牽制するくらいはできるだろう。
そう思って腕を伸ばした瞬間、左肩に衝撃が走った。
ラストの爪が長く伸び、私の肩を貫いたのだ。
「変な気、おこすんじゃないわよ。盗んだ資料の隠し場所、あの子たちに教えたわね?」
「なんの事……」
「とぼけないで」
彼女の爪が肩口をより深く抉る。
流れる血は床に赤い水たまりを作っていく。
痛みに顔を歪ませるも隠し場所をこいつに吐き出すわけにはいかない。