第1章 三人の錬金術師
彼は言った。
錬金術師というのは科学者なため、創造主や神といったあいまいなものは信じていない。
この世のあらゆる物質の創造原理を解き明かし真理を追い求める、と。
「神様を信じないオレ達科学者がある意味神に一番近い所にいるってのは皮肉なもんだ」
「高慢ですね。ご自分が神と同列とでも?」
「―――そういやどっかの神話にあったっけな。"神様に近づきすぎた英雄は、蠟で固めた翼をもがれ地に落とされる"……ってな」
「………行きましょう」
「え?さん、ロゼと話がしたいって……」
「この状況で彼女と話をしても、彼女の気持ちを害すると判断したまでです。少し時間を空けて、後でお話します」
「……すみません、兄さんが」
「いえ、気にすることはありません。行きましょう」
彼女に聞きたかったのはコーネロのことだが、今のロゼさんに聞いても詳しい話は聞けないと思った。
ひとまず街の人たちから情報を収集するしかないか。
そう思っていたが、コーネロの情報などほとんど集まらなかった。
みんな同じような内容ばかり。
コーネロは太陽神レトの代理人、「奇跡の業」で神の道を説いてくださるすばらしい人、コーネロこそ神の人……。
知りたいことなど一つも得られなかったが、「これからコーネロ様の御業が見られるから、見に行ったら?」というご婦人の言葉に、私達の目の色は変わった。
「実際に見られるなんて思わなかったね」
「広場の方に人が集まってんな」
「急ぎましょう」
踵を返して、私達は広場の方へと向かった。